営業所の要件

 

◆いろいろな営業所◆

 

 古物営業に限った話ではありませんが、何か事業をするとなると営業所(事業の本拠)をどうすればいいのかを考えることを避けては通れません。広さは?立地は?駐車場等の条件は?コストは?と、考えることは尽きませんが、そもそも古物営業の許可を取得するのに問題はないか、という視点は外せません。

 古物営業の営業所として認められるための視点は、

 

 ①使用権原があること。周辺の関係者の理解が得られていること。

 自己所有なのか、賃貸借なら契約はしているのか、共同住宅の場合は管理組合等の同意は得られているか、営業所として認められるためには、まずその場所を営業所として使用していいのかが問題になります。

 

 ②その空間が独立性を持っていること。

 取り扱う商品の在庫、金銭、帳簿類、その他の事業に必要なものを適正に保管するため、クライアントが訪問時に目的の古物商であるとすぐ判別できるため、といった理由で独立性が求められます。

 

 ③相当程度の期間、使用権原を維持できること。

 契約期間が短い物件を借りて申請しておいて、違法な営業がばれそうになったら行方をくらまし所在を転々とするということを認めたら許可制度の意味がなくなってしまいます。そのため警察の審査では、契約期間の長さ、残存期間、更新の可否などを賃貸借契約書から読み取り、読み取れない場合には別途添付資料を求めるということもあります。

 

おおむね以上の3点となります。

 

 

 以下、営業所として考えられる種類をあげ、それぞれについて許可取得との関わりについてお話します。

 

 ・自宅(自己所有)

 ・自宅(賃貸借物件)

 ・事務所、店舗(自己所有)

 ・事務所、店舗(賃貸借物件)

 ・レンタルスペース、レンタルオフィス

 ・バーチャルオフィス

 

 

◆自宅(自己所有)◆

 

 自己所有ということで、あまり問題はないのではないかと安心しがちですが、自己所有だとしても一戸建てではなく分譲マンション等の場合は、管理組合で制定したマンション管理規約で営業行為が禁止されていないかを確認してください。禁止されていなかったとしても、実店舗として使用する計画の場合は周辺住民や管理組合に相談した方がトラブル防止の意味では望ましいでしょう。逆に禁止されていたとしても、周辺住民に迷惑がかからないような計画であれば交渉してみてもよいと思います。

 一戸建てにしろ、分譲物件にしろ、このパターンはネットショップ等インターネットを利用した取引や、在庫・陳列にあまり場所を取らない種類の古物営業と親和性が高いでしょう。

 

 

◆自宅(賃貸借物件)◆

 

 自宅というタイトルではありますが、自宅は自己所有の一戸建てで、自宅にはスペースがないという理由で居住専用のマンションの一室などを営業所として借りる場合も同様です。

 そもそも居住専用の物件を借りているため、許可取得との関係では所有権者等(マンションの管理組合も問題になる)の承諾が必要になります。所有権者等との交渉が必要となり、承諾するかどうかは所有権者等の自由であるため、若干ハードルが高いパターンかと思います。

 インターネットを利用した古物営業で、取り扱う商品が小さく軽量であるとか、自宅に在庫を抱えない計画である場合は、比較的承諾してもらえるケースが多いです。反面、不特定多数の来客を前提とした実店舗として自宅を使用する計画だと、一戸建ての物件でも契約時に予想していた損耗の範囲を大きく超える可能性があり、また、マンション、アパート等の共同住宅の場合は周辺住民とのトラブルも予想され、承諾を得られないことが多いようです。

 また、公営住宅の場合は古物営業に限らず営業行為を規約、約款等で禁止していることが多く、承諾を得られるケースはまずないようです。計画の内容によっては承諾を得られるケースもまったくないとは限りませんので、まずは窓口に相談してみるとよいでしょう。

 

 

◆事務所、店舗(自己所有)◆

 

 物件の用途が「事務所用」、「店舗用」で、自己所有であれば、許可取得との関係ではほぼ問題ないパターンではありますが、申請の内容(始めようとする古物営業の種類)によっては、警察署から説明を求められ ることもあるかもしれません。

 中古車販売業などはある程度のスペースが必要になるため、自動車の保管場所について聞かれることが考えられます。計画に見合った保管場所の確保は必要になります。

 

 

◆事務所、店舗(賃貸借物件)◆

 

 物件の用途が「事務所用」、「店舗用」ですので、古物営業の営業所として使用することについては問題なく、原則として賃貸借契約書のコピーを添付すれば許可を得られます。

 ただ、警察署によっては使用承諾書の添付を求めてくることもありますので、物件の契約の際には「古物営業の営業所として使用することを承諾する」旨の使用承諾書を発行してもらえるか確認しておいた方がより確実だと思います。

 

 

◆レンタルスペース、レンタルオフィス◆

 

 レンタルスペースとは、会議、研修等のビジネスや、イベント等のレジャー様々な用途で使えることが多く、物件のバリエーションも豊富です。契約は貸会議室のように1時間~数時間ごとの料金であることがほとんどですので、これを営業所として申請するのは一般的な感覚からも無理でしょう。

 

 レンタルオフィスとは、広いひと間をパーティション(衝立)で区切り、それぞれのスペースにはパソコンが置いてあったり、持ち込みのパソコン等が使える環境のデスクがある場所を言います。

 このようなレンタルオフィスは、営業所として物理的な独立性がほとんどなく、また契約も月単位であることが多く、営業所として認めるにはちょっと難しいのではないでしょうか。

 逆にいえば、パーティション等ではなくちゃんとした壁によって区切られた構造で1部屋1部屋の独立性があり、契約も年単位で自動更新されるような物件であれば、認められる可能性はあるかもしれません。その場合も契約してしまう前に、パンフレット、インターネット上のページの印刷物や、業者に問い合わせた際のメモなどを持参して、警察署に相談した方がよいでしょう。

 

 

◆バーチャルオフィス◆

 

 バーチャルオフィスとは、住所、電話番号等のみ(業務をする場所は一切ないか別サービス)を借り、実際の業務は自宅等の別の場所でというスタイルです。バーチャルオフィス宛の郵便物は従量制で転送され、かかってきた電話はオペレーターが対応のうえ転送ということが多いようです。またクライアントの訪問に対応するための時間貸しオフィスを備えている場合もあります。

 業者によって様々なサービスがありますが、「バーチャル」というぐらいですからそのほとんどは営業所としての適格に欠け、古物営業の許可を得ることはできません。