営業所の管理者

 

◆管理者はなぜ必要?◆

 

 古物商を営むためには、営業所ごとに管理者を選任しなければなりません。これは古物商としての日々の業務が適正なものであることを維持するためでもあり、不正品(盗品)の疑いがあるものを発見した時の申告や、警察署から寄せられる不正品の確認への対応などを適切に処理させるためでもあります。

 また、法律とは直接関係ありませんが、古物商としての十分な知識、経験を持った人を店に置くことによって、買取や販売の価格の決定、買取を強化したい品物の決定などが適切に行われ、事業の成功に繋がるという効果もあるでしょう。

 

 

◆管理者は営業所ごとに1人!◆

 

 古物商を始めようという方の中には、「事業を成功させて、ゆくゆくは各地にいくつものお店を出そう!」と考えている方もいるかもしれません。また、今まで複数の店舗を持って別の事業をやっていた方が、それらの店舗で古物の取り扱いを始めようと初めから複数の店舗で許可申請を考えている方もいるでしょう。

 ですが、ちょっと待ってください。古物営業の管理者は日々の業務から警察対応まで適切に処理することが求められる重要な役割を担っています。藤枝市と静岡市と浜松市にリサイクルショップのお店を持っていたとして、1人の人間が3つのお店の管理者を兼ねていたら、いくらその人が管理者に適した優秀な人でも管理者としての職責を十分に果たせるとは思えません。

 ですから、複数の営業所を持つ場合には、「管理者は営業所ごとに1人必要!」と覚えておいてください。複数の営業所の管理者を兼任することはできないのです。

 ただし、外形上同じ敷地内に2つの建物(店舗)があり、1つは「さくらブックス」という古本屋、もう1つは「リサイクルさくら」というリサイクルショップというような場合で、2つの店舗の管理者を兼任しても問題ないという規模である場合は、例外的に兼任できることもあります。ただ、どの程度離れていても認められるかについては警察署によって対応が分かれそうな問題ですので、行政書士としては申請前にその都度確認をするということになるでしょう。

 

 

◆管理者になれない人①◆

 

  このように管理者はとても重大な責任を負う立場ですから、誰でもがなれるというわけではありません。古物営業法第13条第2項に管理者の欠格事由が定められています。条文の詳しい解説はこちらのページを参照してください。

 

 (古物営業法第13条第2項)

 第1号 未成年者

 第2号 第4条第1号から第5号までのいずれかに該当する者

  ⇒第4条

   第1号 成年被後見人、被保佐人、破産者で復権を得ない者

   第2号 禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者

   第2号 背任罪、遺失物等横領罪 、盗品の運搬、保管、有償譲渡、有償の処分のあっせん等の罪、古物営業法違反

        のうち、無許可営業、許可の不正取得、名義貸し、営業停止命令違反で罰金の刑に処せられ、その執行を終

        わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者

   第3号 住居不定者

   第4号 許可の取り消しから5年を経過しない者

   第5号 許可取り消しの聴聞が公示されてから、聴聞手続きが完了するまでに許可証を返納した場合は、返納から5年

        を経過しない者

 

 

◆管理者になれない人②◆

 

 古物営業法に基づく欠格事由は前項の通りですが、この他に事実上管理者になれない(不適切)というパターンがあります。

 それは2つ前の項の「管理者は営業所ごとに1人!」でお話ししたことと重なりますが、管理者として十分な職責を果たせる環境にある人でなければならないということで、以下のような人は管理者になれません。

 

 ①営業所から著しく離れた場所に住んでいる人

 これは本当に管理者として営業所に毎日通勤できるのか、という基準で判断されます。東京の都心の会社にお勤めで、住んでいるのは他県という方で通勤に2時間かかるという話もよく聞くので、どの程度まで許容されるのかというのは難しい問題ですが、あまり基準ギリギリというような人選はしない方が申請がスムーズになるでしょう。

 

 ②常勤性を満たせない人

 これも同じ理屈ですが、他の会社や店で雇われていたりして、管理者としての勤務時間がほとんど取れないというのでは許可されません。

 

 

◆管理者の積極的要件◆

 

 ここまで「~~な人は管理者になれない」という消極的な要件についてお話してきましたが、管理者に求められる能力についてお話します。

 営業所の管理者は、古物営業法に関する知識を持ち、ルールに則った営業所の運営をすることが求められます。

 そして、より具体的な実務の面での基準となりますと、古物営業法施行規則第14条が参考になります。

 

■古物営業法施行規則第14条■
 法第13条第3項の国家公安委員会規則で定める知識、技術又は経験は、自動車、自動二輪車又は原動機付自転車を取り扱う営業所又は古物市場の管理者については、不正品の疑いがある自動車、自動二輪車又は原動機付自転車の車体、車台番号打刻部分等における改造等の有無並びに改造等がある場合にはその態様及び程度を判定するために必要とされる知識、技術又は経験であって、当該知識、技術又は経験を必要とする古物営業の業務に三年以上従事した者が通常有し、一般社団法人又は一般 財団法人その他の団体が行う講習の受講その他の方法により得ることができるものとする。

 

  規則によって定められているのは中古の自動車、バイク、原付を扱う古物営業のみですが、他の物品を扱うお店でもおおむね同じようなことが言えるでしょう。不正品であるかどうかを判断するための知識等を必要とする古物営業の業務に3年以上従事して得られるレベルの知識等を求められています。ただ、実際に3年以上従事した経験を持っている必要はなく、意欲的にスキルを身につけていった結果、通常3年従事すれば身につくレベルの知識等を既に持っていれば、期間が1年でも管理者にはなれます。

 また、その営業所の古物取引に関する最高責任者ですから(職名はともかく)、他に従業員がいる場合はその従業員の業務活動も管理・監督・指導できるだけの能力が必要です。

 管理者に必要な能力をまとめると、「法令を遵守!」、「不正品を見抜くスキル!」、「他の従業員を管理・監督・指導!」ということになります。