◆取引相手の確認はなぜ必要?◆
昔から漫画やCD等の窃盗が社会問題になっていますが、欲しいから盗むのではなく、買い取ってくれる店があるから盗むというケースも後を絶ちません。このように、古物の取引には盗品等が紛れ込む危険性を常にはらんでいます。古物営業法はそうした危険性をできる限り克服して、犯罪の防止と迅速な被害回復を目的として作られた法律です。
そして、これらの目的を実現するために古物商等に課された具体的な義務が、本項の「取引相手の確認」、次項以降の「不正品の申告」、「品触れ」、「帳簿の記録」(防犯四大義務)です。
それでは、防犯四大義務の1つ目、取引相手の確認について見てみましょう。
◆取引相手の確認をする場面と事項◆
取引相手の確認が必要となるのは、買い受け、交換、または売却、交換の委託を受ける時です。商品を売却する時は除かれています。
また、確認するべき事項は、取引相手の住所、氏名、職業(勤務先)、年齢です。
◆確認の方法◆
①相手方の住所、氏名、職業及び年齢を確認すること。(法第15条第1項第1号)
具体的には、身分証明書、運転免許証、国民健康保険被保険者証などの本人確認資料の提示を受けたり、相当程度に信頼のできる第三者に問い合わせて相手方の身元を確認します。(規則第15条第1項)
②相手方からその住所、氏名、職業及び年齢が記載された文書(その者の署名のあるものに限る。)の交付を受けること。(法第15条第1項第2号)
具体的には、古物商や他の従業員の目の前で万年筆、ボールペン等の改竄できない筆記用具で、確認事項(住所、氏名、職業、年齢)を記入させ、さらに署名させます。事前に記入してきた文書の交付を受けただけでは「面前で」という要件を満たさないので確認したことにはなりません。また、記入、署名の際に書きよどむなど、記入した内容が真正なものでないと疑わしいときは、①の本人確認資料を提示させる等の方法により確認しなければなりません。(規則第15条第2項)
③確認事項が記され、電子署名をしたメール等の送信を受けること。(法第15条第1項第3号)
④相手方からその住所、氏名、職業、年齢を記入したうえで、実印登録した印鑑でに押印された書面と、押印に使用した印鑑の印鑑登録証明書の送付を受けること。(規則第15条第3項第1号)
⑤相手方からその住所、氏名、職業、年齢を教えてもらい、その住所、氏名に宛てて、本人限定受取郵便物等を送付し、その到達を確かめること。 (規則第15条第3項第2号)
⑥相手方からその住所、氏名、職業、年齢を教えてもらい、その住所、氏名に宛てて、本人限定受取郵便物等により当該古物の代金を支払う契約をすること。(規則第15条第3項第3号)
⑦相手方からその住所、氏名、職業、年齢を教えてもらい、相手方の住民票の写し等の証明書類の送付を受け、送付を受けた住民票の写し等に記載された住所、氏名に宛てて配達記録郵便物等(簡易書留等)で転送をしない取扱いをされるものを送付し、その到達を確かめること。 (規則第15条第3項第4号)
⑧相手方からその住所、氏名、職業、年齢を教えてもらい、相手方の住民票の写し等の証明書類の送付を受け、送付を受けた住民票の写し等に記載された氏名と、名義人の氏名が一致する預貯金口座への振込み又は振替の方法により当該古物の代金を支払う契約をすること。 (規則第15条第3項第5号)
⑨相手方からその住所、氏名、職業、年齢を教えてもらい、相手方の身分証明書、運転免許証、国民健康保険被保険者証などの本人確認資料のコピー(明瞭に表示されたものに限る)の送付を受け、送付された資料のコピーに記載された住所、氏名に宛てて配達記録郵便物等で転送をしない取扱いをされるものを送付し、その到達を確かめ、また、その資料のコピーに記載された氏名と、名義人の氏名が一致する預貯金口座への振込み又は振替の方法により当該古物の代金を支払う契約をすること。この場合、当該古物にかかる帳簿等又はそれに代わるファイルとともに当該資料の写しを保存しなければならない。 (規則第15条第3項第6号)
⑩古物商又は他の従業員の目の前で、タブレットなどの器具を使用して、相手方の住所、氏名、職業、年齢を記入させ、さらに署名させること。ただし、記入、署名の際に書きよどむなど、記入した内容が真正なものでないと疑わしいときは、①の本人確認資料を提示させる等の方法により確認しなければならない。(規則第15条第3項第7号)
⑪①~⑩までの方法により確認を行ったことのある相手方に対し、IDとパスワードを交付し、それらによって自身のホームページにログインさせること。(規則第15条第3項第10号)
確認方法の種類がかなりたくさんあり覚えるのは大変かもしれませんが、上記の方法のうちどれか1つによって確認すればよいので、ご自身の営業スタイルに合わせて1つ、2つの方法をマニュアルとして定めておき、その他の方法についてはお客さんからの問い合わせがあった時に確認してみるという形でよいでしょう。
①、②、⑩は、お店や相手方の住所等、対面で買い受ける場合に適しています。また、③~⑨、⑪はホームページ等、インターネットを利用した取引に適しています。
◆確認義務が免除される場合◆
すべての買い受け等に確認が必要だとすると業務が煩雑すぎるということもあり、下記の場合には確認義務が免除されます。
①対価の総額が1万円未満の取引の場合(法第15条第2項第1号、規則第16条第1項)
ただし、下記の物品について対価の総額が1万円未満であっても確認義務は免除されません。(規則第16条第2項)
・バイク、原付(部品を含む。ただし、ねじ、ボルト、ナット、コードなど汎用性のある部品は除く=免除)
・家庭用ゲームソフト(テレビゲーム、パソコンゲームなど)
・音楽や映像が記録された光学式記録メディア(CD、DVD、レーザーディスクなど)
・書籍
②自分が売却した物を、その売却した相手方から買い受ける場合(法第15条第2項第2号)